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トンキプ by サブリナ
誰もが、サブリナのつくるぬいぐるみを見ると思わず笑顔になる。愛らしい動物のような、人間のような、宇宙人のようなそのぬいぐるみには、Tonkipuと言うとぼけた響きがよく似合う。はじめて彼女がTonkipuをつくったのは、愛する息子のマリウス君のためだったという。マリウス君がすぐに夢中になってしまったのも納得してしまう、なんともいえないこのほのぼのした人形が、彼女の人生を変えることになったなんて、彼女もそのときは想像もしなかったと思う。 は、今でももちろんマリウスの大のお気に入り。 これが記念すべき初Tonkipu。フランス語で、Tonは「あなたの」、kipu(qui pue)は「臭い」という意味。マリウス君が可愛がりすぎたせいで、初代のぬいぐるみは半年もすると微妙な臭いがしてきたらしく、それで、「あなたの臭いヤツ」と命名されたとのこと。 はじめは息子のために、その後は友人たちだけにつくっていたTonkipuは、今では フランス・エルやパリ・マッチなどの数々の雑誌に紹介されたり、2006年クリスマス にはパリの現代美術館パレ・ド・トーキョーで販売されるなど、すっかり人気者。ノ ルウェーなど外国に呼ばれて、ぬいぐるみを紹介することも増えてきた。その他に も、彼女のメールボックスには、毎日10通以上もTonpiku制作の依頼メールが入って くるという。4歳のマリウス君と、3歳のオスカー君の子育てのかたわら、人形制作の 時間をひねりだすのも一苦労。週に2回、家の3階にしつらえられたアトリエにこもっ て仕事にかかると、夕方までご飯も食べずにミシンの前でクリエーションに没頭し て、また、夜になって子供たちが寝てから仕事を再開するのが普通だと言う。 私たちがサブリナのアトリエを訪ねた日が太陽の陽が美しい日だったからだけでは なくて、サブリナは、ぽかぽか照る太陽のようなあたたかい印象を人に与える。急な 階段をあがったところにあるアトリエの壁には作業台が備え付けられ、ミシンのすぐ 上には小さな窓があり、そこから優しく光が差し込んでいる。壁紙の原色の水玉模様 や、キッチュな置物などに囲まれたこの明るい空間で、Tonkipuは生まれる。インド を初めとする世界各地から集めた布、日曜日のアンティーク通いで見つけた年代物の 美しい模様の布などをさまざまに組み合わせ、ああでもないこうでもないと試行錯誤 しながら、ひとつのぬいぐるみをつくるのには今でも1時間から1時間半かかるとい う。パリの由緒ある芸術・建築専門学校(L’EPSAA)のデザイン科を優秀な成績で卒 業し、グラフィック・デザイナーとして働いたこともある彼女だけれど、縫い物は新 しい分野。制作しながら学ぶことも多いという。例えば、これからつくるTonkipuの 目には、子供がつかんだり引っ張ったりしてもとれないように工夫されている専用ボ タンを使うことに決めたという。 をつくったり、子供たちそれぞれにそっくりのぬいぐるみをつくったり、インスピレーションのままに制作は進む。 今後は、子供たちも大きく成長してきたし、子供部屋用に飾るコラージュ作品をつ くったりしつつ、今までより一層Tonkipuの制作時間を増やしていきたいという。 Tonkipuのロゴを使った麻製のかばんや携帯ストラップなど、新しい需要にも応える べく徐々に仕事を増やしているところだ。どこか日本人のように控えめな彼女は、 「どうして、こんなにTonkipuのぬいぐるみに人気が出てきたか分からない。このぬ いぐるみに、こんなにお金を出してくれる人がたくさんいることがよく分からな い。」と言うけれど、ぬいぐるみに自然ににじみでる彼女の良さが、見るものを和ま せてくれるのだと思う。パンクなのに攻撃的ではない、自由なのに地に足がついてい る、少女の心と強い母性、そんな相反するものがバランスよく溶け合った彼女の個性 は、今後ますます世界を楽しくしてくれそうだ。 2008年には、インドで津波の被害にあった子供たちのために現地に15日ほど滞在 し、災害後につくられた学校でぬいぐるみづくりの指導をするという。夢中でぬいぐ るみをつくる子供たちの姿が今から目に浮かぶようだ。もともと、子供を思う母の視 点でつくられたTonkipu制作を通して、災害で親や兄弟を亡くした子供たちの心が明 るくなることを祈りたい。 文章 中川 さやか 写真 千々和 真弓 トンキプはプチデコサイトwww.petitdeco.comで販売しております。 サイトオープンまでしばらくお待ちください。
by petitdeco
| 2007-03-14 19:00
| アーティスト・クリエイター
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